イーサリアムは、Vitalik Buterinと呼ばれるソフトウェア開発者と少人数の共同創設者チームによって2015年7月にローンチされたオープンでパブリックなブロックチェーンです。
イーサリアムの背景にあるアイデアはシンプルでした。ビットコインがデジタルキャッシュの送受信を可能にしたのに対し、イーサリアムはスマートコントラクトと呼ばれるオープンソースプログラムでこれを発展させることでした。
スマートコントラクトにより、誰でも独自のデジタルアセットと、グローバルに24時間365日稼働する分散型アプリケーション(dapps)を作成できます。そして銀行、企業、その他の機関とは異なり、スマートコントラクトはインターネット接続があれば誰でも利用できます。
2015年以来、イーサリアムはステーブルコイン、非代替性トークン(NFT)、ガバナンストークンなどのデジタルアセットの繁栄するエコシステムへと成長し、分散型金融(DeFi)、アートやコレクティブル、ゲーミング、分散型ソーシャルメディア向けのdappsの広大な世界へと発展しました。
これらのエコシステムは総称して「web3」と呼ばれ、オーナーシップを中心としたインターネットの第3段階を表しています。
今日、イーサリアムは世界中の数百万人によって使用され、数十億ドルの資産を保有し、銀行なしで毎年数兆ドルの送受信を行っています。
これらすべての中核にあるのがイーサリアムのネイティブ暗号通貨Ether(ETH)で、これはネットワーク全体を動かす新しい種類のデジタルマネーです。

イーサリアムネットワークとは何ですか?
イーサリアムネットワークは誰でも使えるが、誰も悪用できないグローバルなデジタルインフラとして考えることができます。
このネットワークは、ノードと呼ばれる世界中の数千台の独立したコンピューターで構成されています。一般の人々によって運営されるこれらのノードが連携し、どこでも誰にでも金融サービスとデジタルアプリケーションを提供します。
イーサリアムネットワークは、機関が所有する従来のネットワークに対して3つの主要な利点を持っています。それは検閲耐性、強化されたセキュリティ、向上した信頼性です。
検閲耐性
従来のアプリや金融サービスは、アクセスをブロックしたりアカウントを凍結したりすることを決定できる銀行や企業に依存していますが、イーサリアム上のdAppsは検閲耐性を持ちます。
これは、イーサリアムのノードネットワークが差別なくすべての単一トランザクションを記録するからです。そしてこのルールはコードに組み込まれています。
高度にセキュア
今日の多くのアプリがAWSなどのクラウドプロバイダーでホストされており、テイクダウンや攻撃に対して脆弱である可能性がある一方で、イーサリアム上のdAppsはネットワーク自体によって保護されています。すべてのノードは、すべてのコントラクトを含むイーサリアムの全状態を保存し同期します。
誰かがコントラクトを変更しようとした場合、それは彼らの記録と一致しないため、ネットワークはそれを拒否するでしょう。単一のアプリを停止させるには、攻撃者はネットワーク全体を乗っ取る必要があり、これには数十億ドルの費用がかかり、調整することは極めて困難です。
耐久性と信頼性
クラウドホスティングプラットフォームのダウンタイムはアプリをオフラインにする可能性がありますが、イーサリアムの設計は完璧なアップタイムを保証します。ソフトウェアバグ、政府の取り締まり、自然災害、戦争によって一部のノードがオフラインになっても、ネットワークは動き続けます。
毎日数百万人がイーサリアム上の数千のdAppsを使用しています。高い需要が高額なトランザクション手数料につながる可能性がある一方で、これはセキュリティ、分散化、そして必要な時に常に利用可能であることの保証を優先するネットワークの強さを反映しています。
イーサリアム拡張(レイヤー2)

イーサ(ETH) とは?
イーサ(ETH)はイーサリアムのネイティブ暗号通貨です。
これは世界中のどこにいても誰にでも数秒で送ることができる新しい種類のデジタルマネーで、コストはわずか数セントです。しかしETHは単なる決済以上の意味を持ちます。イーサリアムネットワークを稼働し続ける上で重要な役割を果たしています。
イーサリアムを使って送金、アートの収集、新しいdAppの構築を行う際、ETHで少額のトランザクション手数料(またはガス手数料)を支払います。この手数料はスパムを防止し、トランザクションを処理するバリデータと呼ばれる人々への報酬となります。
これらのバリデータはステーキングと呼ばれるシステムを通じてイーサリアムネットワークをセキュアにします。ETHをロックアップすることで、トランザクション処理が可能になります。その見返りとして、報酬としてETHを獲得します。これにより、イーサリアムは企業ではなくユーザーの力で独自の自立経済を持つことになります。
多くの従来の通貨とは異なり、ETHは時間の経過とともにより希少になる可能性があります。誰かがイーサリアムを使用するたびに、ETHの一部がバーンされ、供給から永続的に取り除かれます。忙しい日には、作成されるより多くのETHがバーンされ、ETHが減少し、時間の経過とともにその価値を上昇させます。イーサリアムが使用されるほど、より多くのETHがバーンされます。
このため、多くの人々がETHを投資として見なし、貯蓄を増やすためにホールド、ステーク、または貸出を選択しています。

イーサリアムはどのように動作するのですか?
イーサリアムが2015年にローンチされたとき、プルーフ・オブ・ワークと呼ばれるシステムを使用していました。
ビットコインによって開拓されたこのメカニズムは、すべてのコンピューターが誰が何を所有するかについて合意する方法です。コンピューターは複雑な数学的パズルを解こうとして大量のエネルギーを使用していました。勝者は受信トランザクションのブロックを提案し、新しいETHを獲得することができました。
2022年、イーサリアムはプルーフ・オブ・ステークと呼ばれる99%エネルギー効率の高い新しいシステムにアップグレードしました。数学的パズルの代わりに、バリデータはトランザクションを処理する権利を得るために、担保としてETHをロックします。
正しく行えば、ETHを獲得します。もしチートをすれば、ステークの一部を失います。
次に例を示します:
友人にイーサリアム上でステーブルコイン10ドルを送金する際:
- ウォレットを開き、アカウントアドレスと金額を入力して、送信をクリックします。
- ウォレットが支払いに署名し、ネットワークにブロードキャストします。
- 支払いはブロック提案者に選ばれるまで、パブリックキュー(メンプール)で待機します。
- ブロック提案者がそれを次のトランザクションブロックに追加し、ブロードキャストして手数料を獲得します。
- ステーブルコインコントラクトがあなたから友人へ10ドルを移動し、両方のウォレットがアップデートされます。
- グローバルなバリデータネットワークが変更の有効性を二重チェックし、証明します。
イーサリアム上で5ドルのコレクティブルをミントする際:
- ウォレットをdappに接続し、ミントするアイテムを選択します。
- 購入を確認し、ウォレットがトランザクションに署名してブロードキャストします。
- ミントリクエストはメンプールに参加し、バリデータによってブロックに追加されます。
- NFTスマートコントラクトがあなたのウォレットを新しい所有者として記録します。
- 数秒後、新しいコレクティブルがウォレットに表示されます。
これらすべてはスマートコントラクトの力によって実現されています。スマートコントラクトは、イーサリアム上で動作し、365日24時間稼働し、世界中の誰もがどこからでもアクセス可能なオープンソースプログラムです。
すべてのトランザクション、アップデート、アクションは何千もの独立したノード間で同期されます。これがイーサリアムに信頼性、透明性、検閲耐性をもたらしています。

イーサリアムはどのように使われているのですか?
人々はイーサリアムを使って、これまで実現できなかったことを行っています。
ケニアの農家は銀行への申請なしに作物の自動保険を受け取ることができます。Visaのような企業は初日からグローバルに機能する新しい決済システムを立ち上げることができます。国連のようなグローバル組織は数百万ドルの銀行手数料を節約しながら難民への支援を届けることができます。
これらのdAppsとアセットは、オープンソースコードを使用してイーサリアム上で動作し、制限、検閲、停止されることはありません。
現在、様々なグループがイーサリアムを活用しています:
消費者
既に何百万人もの人々がイーサリアム上のdappを利用して、毎日お金を動かし、取引し、デジタル資産を保有しています。従来のアプリと異なり、名前登録も、銀行の承認を待つ必要も、個人情報を差し出す必要もありません。
ウォレットとインターネット接続さえあれば、次のようなことが可能です:
- 銀行口座やクレジット履歴がなくても、金融サービスにアクセスできます
- 複製や没収ができないデジタルコレクティブルやアート、資産を保有できます
- メールアドレスではなくウォレットでdappにサインインできます。パスワードも個人情報も不要です
- 国境を越えたグローバルなコミュニティに参加し、投票や貢献、報酬を獲得できます
ビジネス&デベロッパー
- 初日からグローバルな決済システムを組み込んだdappをローンチできます
- 改ざん不可能なコントラクトをデプロイし、合意内容を自動的に履行できます
- 誰もが基盤として利用でき、価値を生み出せる金融プロダクトをつくり出せます
例えば、Paypalは自社のステーブルコイン「PYUSD」をイーサリアム上でローンチしました。これは、世界最大級の決済企業でさえ、イーサリアムのオープンでプログラマブルな特性に価値を見出している証拠です。
政府
政府もまた、イーサリアムが可能にすることを探り始めています。
- 公的資金の配布や給付金を、完全な透明性を持って市民に直接届けられます
- 国境を越えて利用できる、検証可能なデジタルIDや記録を発行できます
- 投票や土地登記、各種台帳といった公共インフラを改ざん不可能な形でビルドできます
実例として、ウクライナのデジタル変革省は、イーサリアムを用いて戦時下の資金を配布しました。
オープンなスマートコントラクトを通じ、市民やNGOに直接資金を届けることで、危機の中でも透明性・迅速性・説明責任を確保しました。

イーサリアムを使い始めるには
イーサリアムを使い始めるのは、思うよりずっと簡単です。
許可は不要ですし、銀行口座も、身分証明書すらも要りません。必要なのは、デバイスとインターネット接続だけです。
個人向け
最初のステップは、ウォレットのダウンロードです。
Zerion、Rainbowそして Coinbaseウォレットといった人気ウォレットは無料かつ使いやすいです。ウォレットをセットアップしたら、次のことが可能になります:
- 取引所やウォレット内で少額のETHを購入
- そのETHを用いて、トークン送信やNFTの取得といったトランザクションの手数料を支払う
- Zora、Uniswap、Farcasterといったdappの利用。新しいログインや承認は不要
これらの優先事項によって、イーサリアムは日々多くの人々に利用される中でも、安全性・スケーラビリティ・使いやすさを確保できるのです。
これらのdappはブラウザ上で動作し、ウォレットと即時に連携します。あなたは数分のうちにイーサリアムを使い始めることができます。
デベロッパー向け
イーサリアムはデベロッパーにとってのプレイグラウンドです。許可や承認、本物のお金さえ必要なく、すぐに開発を始めることができます。
イーサリアムのデベロッパー向けドキュメントでは、最初のスマートコントラクトの書き方からSepoliaのようなテストネットへのデプロイまで、すべてステップごとに学ぶことができます。
Hardhat、Foundry、そして Ethers.jsといったツールを使えばフルスタックのdappを構築でき、thirdwebやMoralisのようなローコードプラットフォームで試すこともできます。
すべてオープンソースで構成可能です。そのため、許可不要で、既に存在するものを自由にリミックスしてその上に構築できるのです。
ビジネスでイーサリアムを活用する
企業は既に、イーサリアムを基盤とした新しいインフラを構築し始めています。
多くの企業は、まずOptimismやBaseといったL2ネットワークを利用して、大量の取引が発生するユースケースに対応します。これらのネットワークは手数料が安く、処理速度も速い一方で、イーサリアムのセキュリティを享受でき、カウンターパーティリスクを取り除けます。
できること:
- リテンションを高め、サードパーティコストを削減するモジュラー型ロイヤリティプログラムを立ち上げる
- チケット、クーポン、証明書といった資産をトークン化し、不正利用や転売リスクを軽減する
- 即時のグローバル決済を実現し、トランザクションフィーを下げつつ新しい市場を開拓できる
例えば2025年には、ShopifyがBase上でサービスを開始し、消費者は世界中の数百万の販売者に対し、ステーブルコインで支払えるようになりました。
イーサリアムとビットコインの違いは?
ビットコインとイーサリアムは、世界で最も大きな2つの仮想通貨です。
どちらも銀行を介さずに送金でき、ブロックチェーン技術上で動き、誰にでも開かれています。しかしながら、共通点はそこまでです。
ビットコインはデジタルゴールドのようなものです。
供給量は2100万コイン固定で、ピア・ツー・ピアの送金に特化しており、構築できるものを制限するシンプルなスクリプト言語を備えています。このシンプルさは設計されたもので、ビットコインは、柔軟性より予測可能性・耐久性・長期的なセキュリティを優先しています。
イーサリアムは、より幅広いアプローチをとっています。
イーサリアムは、単なるお金ではなく、プログラマブルなインフラです。価値の送受信にとどまらず、デベロッパーはイーサリアム上でアプリケーション全体を構築できます。レンディングマーケットやステーブルコイン、コレクティブル、ソーシャルメディア、そしてリアルタイム決済といった仕組みも既に登場しており、すべてがスマートコントラクトによって動作し、ETHによってセキュアに保たれています。
ネットワークがコンセンサスに到達する仕組みも異なっています。
ビットコインはマイナーがネットワークを保護します。彼らは高性能コンピュータを使い、複雑なパズルを解く競争を行い、勝者が次のトランザクションブロックをチェーンに追加し、報酬としてビットコインを獲得します。この仕組みはマイニングと呼ばれ、大量の電力を消費します。
イーサリアムもかつては同様の仕組みを採用していました。しかし2022年にプルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステークへと移行しました。現在は、ETHを担保としてロックしたバリデータがトランザクションを承認しています。誠実なバリデータはETHで報酬を得、不正を働いたバリデータはステークの一部を失います。この移行によって、イーサリアムはセキュリティや分散性を犠牲にすることなく、エネルギー効率を99.988%以上改善しました。
供給の扱い方にも違いがあります。
ビットコインは供給量が固定されており、発行されるのは2100万コインのみです。一方、イーサリアムは、動的な供給モデルを採用しています。新しいETHがバリデータ報酬として発行されますが、トランザクションごとに一部がバーンされます。そのため、イーサリアムがETHを無限発行できるわけではありません。
発行率はステークされているETHの量によって制限されます。多くのETHがステークされれば、個々の報酬は減少し、自然なバランスが生まれます。この設計によって、トランザクションフィーのみに依存することなく、将来にわたって持続可能なセキュリティ予算が確保されます。
要するに、ビットコインは価値を送るためのツールであり、イーサリアムは価値を構築するためのプラットフォームなのです。

イーサリアムはいつ、誰によってローンチされ、現在は誰が運営しているのでしょうか?
最初から、イーサリアムはコミュニティによって運営されるよう設計されていました。
2013年、Vitalik Buterinが、誰でも使えるお金とアプリのための新しいタイプのブロックチェーンを提案するホワイトペーパーを公開しました。そのアイデアはすぐに注目を集めました。
2014年までには、Gavin WoodやJoseph Lubinといった共同創設者が加わり、チームは初期のクリプト・クラウドファンディング・キャンペーンのひとつを通じて資金を調達しました。
イーサリアムは2015年7月に公式にローンチしました。
イーサリアムの歴史における重要な瞬間
- 2013: 19歳のVitalk Buterinがイーサリアムホワイトペーパーを公開
- 2014: イーサリアム・ファウンデーションが設立され、クラウドファンディングを実施
- 2015: デベロッパーたちがフロンティアリリースと共にイーサリアムネットワークをローンチ
- 2016: The DAOのスマートコントラクトが悪用され、6000万ドル(360万ETH)が流出。これを受けてチェーンがフォークされた
- 2020: ビーコンチェーンがローンチされ、プルーフ・オブ・ステークへの移行が始まる
- 2021: ロンドンアップグレードにより、EIP-1559を通じてガスフィーの一部がバーンされる仕組みが導入
- 2022: マージによりマイニングがステーキングに置き換わり、エネルギー消費量が99%削減
- 2025: Pectraアップグレードにより、スマートウォレットのサポートとL2互換性が改善
今日では、イーサリアムを運営する特定の個人や企業は存在しません。

ネットワークは幅広いコントリビューターによって維持されています:
- アップグレードを設計・提案するデベロッパー
- 分散型の物理インフラを支えるノード運用者
- トランザクションを検証するステーカー
- ツールや文化を築くコミュニティメンバー
- ネットワークを実際に利用するあなた
CEOも取締役会も中央権威も存在しません。イーサリアム・ファウンデーションは今も研究開発への資金提供を行なっていますが、エコシステム自体はオープンな参加によって成り立っています。
変更はイーサリアム改善提案(EIP)を通じて提案され、公開で議論され、広範なコミュニティの支持を得た時にのみ採用されます。
そのため、イーサリアムはスタートアップほど素早く変化しませんが、停止させたり乗っ取ったりすることは非常に困難です。
イーサリアムの2025年ロードマップは?
イーサリアムに固定されたロードマップではなく、共有されたビジョンに基づき進化しています。
ネットワークのアップグレードはEIPとして提案され、世界中のコントリビューターによって公開の場で開発されます。何を実現するか決める中央のチームは存在せず、ユーザーのニーズに基づいて役立つと信じるものを皆で構築しています。
Pectraは、2025年5月に実施された最新アップグレードです。このアップグレードにより、ウォレット機能が向上し、ステーカーに柔軟性が与えられ、dappがL2上で動作しやすくなりました。目標は、セキュリティや分散性を犠牲にせずユーザービリティを改善することでした。
今後のイーサリアムの優先事項:
- コアプロトコルとL2を、すべての人々にとってより高速かつ低コストにすること
- ユーザーとデベロッパー双方の体験を改善すること
これらの優先事項によって、イーサリアムは日々多くの人々に利用される中でも、安全性・スケーラビリティ・使いやすさを確保できるのです。
もしイーサリアムの進む方向を形作りたいなら、ぜひ参加してください。許可は必要ありません。この新しいデジタルエコノミーに変化をもたらしたいという思いさえされば十分です。
