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ERC-20トークン規格

最終編集者: @HiroyukiNaito(opens in a new tab), 2024年6月11日

はじめに

トークンとは何か?

トークンは、イーサリアムネットワークにおいて事実上あらゆるものを表現できます。

  • オンラインプラットフォームにおける評価ポイント。
  • ゲーム内のキャラクターにおけるスキル。
  • 企業の株式などの金融資産。
  • 米ドルをはじめとする法定通貨。
  • 金(ゴールド)1オンス。
  • 等々。

イーサリアムにおいてこれほどの威力を持つ機能に対しては、必然的に堅牢な規格が必要です。 これこそ、ERC-20規格が果たすべき役割なのです! この規格を用いることで、イーサリアム外の製品やサービスと相互運用できるトークンアプリを構築することが可能になります。 ERC-20規格は、へ追加機能を提供するのにも使われています。

ERC-20とは何か?

ERC-20規格は、代替性トークンを扱うための標準規格です。つまりこの規格では、ひとつのトークンが、その種類および値において他のトークンとまったく同じであるというプロパティを持たせることができます。 例えば、ERC-20トークンはETHとまったく同様に動作します。つまり、1トークンは、現在および将来において常に、他のひとつのトークンと同等になります。

前提知識

  • アカウント
  • スマートコントラクト
  • トークンの基準

規格の概要

ERC-20(Ethereum Request for Comments 20)は、スマートコントラクト内にトークンAPIとして実装できるトークン規格として、ファビアン・ヴォゲルステラー氏により2015年11月に提案されました。

ERC-20は、以下のような機能を提供します:

  • トークンを、ひとつのアカウントから他のアカウントに転送する。
  • アカウントにおける現在のトークン残高を取得する。
  • ネットワーク上で利用可能なトークンの総供給量を取得する。
  • 特定のアカウントにおけるトークンにつき、一定額をサードパーティのアカウントが使用できるか否かを承認する。

以下のメソッドおよびイベントを実装しているスマートコントラクトはERC-20トークンコントラクトと呼ぶことができ、デプロイされると、イーサリアム上で発行されたトークンの状況を追跡する責任を負います。

EIP-20(opens in a new tab)から引用:

メソッド

1function name() public view returns (string)
2function symbol() public view returns (string)
3function decimals() public view returns (uint8)
4function totalSupply() public view returns (uint256)
5function balanceOf(address _owner) public view returns (uint256 balance)
6function transfer(address _to, uint256 _value) public returns (bool success)
7function transferFrom(address _from, address _to, uint256 _value) public returns (bool success)
8function approve(address _spender, uint256 _value) public returns (bool success)
9function allowance(address _owner, address _spender) public view returns (uint256 remaining)
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イベント

1event Transfer(address indexed _from, address indexed _to, uint256 _value)
2event Approval(address indexed _owner, address indexed _spender, uint256 _value)
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実例:

イーサリアムのERC-20トークンコントラクトのコードを詳しく見ることで、これらの規格がイーサリアムのシンプルさを保証する上でどれだけ重要なのかを理解しておきましょう。 ERC-20トークンを扱うインターフェイスを開発するには、当該コントラクトのアプリケーション・バイナリー・インターフェイス(ABI)を用いればよいです。 理解しやすいように、以下では簡略化したABIを用いています。

Web3.pyの実例:

まず、 PythonのライブラリからWeb3.py(opens in a new tab)をインストール済みであることを確認してください:

1pip install web3
1from web3 import Web3
2
3
4w3 = Web3(Web3.HTTPProvider("https://cloudflare-eth.com"))
5
6dai_token_addr = "0x6B175474E89094C44Da98b954EedeAC495271d0F" # DAI
7weth_token_addr = "0xC02aaA39b223FE8D0A0e5C4F27eAD9083C756Cc2" # Wrapped ether (WETH)
8
9acc_address = "0xA478c2975Ab1Ea89e8196811F51A7B7Ade33eB11" # Uniswap V2: DAI 2
10
11# これはERC-20トークンのコントラクトのアプリケーション・バイナリ・インターフェース(ABI)を簡略化したものです。
12# It will expose only the methods: balanceOf(address), decimals(), symbol() and totalSupply()
13simplified_abi = [
14 {
15 'inputs': [{'internalType': 'address', 'name': 'account', 'type': 'address'}],
16 'name': 'balanceOf',
17 'outputs': [{'internalType': 'uint256', 'name': '', 'type': 'uint256'}],
18 'stateMutability': 'view', 'type': 'function', 'constant': True
19 },
20 {
21 'inputs': [],
22 'name': 'decimals',
23 'outputs': [{'internalType': 'uint8', 'name': '', 'type': 'uint8'}],
24 'stateMutability': 'view', 'type': 'function', 'constant': True
25 },
26 {
27 'inputs': [],
28 'name': 'symbol',
29 'outputs': [{'internalType': 'string', 'name': '', 'type': 'string'}],
30 'stateMutability': 'view', 'type': 'function', 'constant': True
31 },
32 {
33 'inputs': [],
34 'name': 'totalSupply',
35 'outputs': [{'internalType': 'uint256', 'name': '', 'type': 'uint256'}],
36 'stateMutability': 'view', 'type': 'function', 'constant': True
37 }
38]
39
40dai_contract = w3.eth.contract(address=w3.to_checksum_address(dai_token_addr), abi=simplified_abi)
41symbol = dai_contract.functions.symbol().call()
42decimals = dai_contract.functions.decimals().call()
43totalSupply = dai_contract.functions.totalSupply().call() / 10**decimals
44addr_balance = dai_contract.functions.balanceOf(acc_address).call() / 10**decimals
45
46# DAI
47print("===== %s =====" % symbol)
48print("Total Supply:", totalSupply)
49print("Addr Balance:", addr_balance)
50
51weth_contract = w3.eth.contract(address=w3.to_checksum_address(weth_token_addr), abi=simplified_abi)
52symbol = weth_contract.functions.symbol().call()
53decimals = weth_contract.functions.decimals().call()
54totalSupply = weth_contract.functions.totalSupply().call() / 10**decimals
55addr_balance = weth_contract.functions.balanceOf(acc_address).call() / 10**decimals
56
57# WETH
58print("===== %s =====" % symbol)
59print("Total Supply:", totalSupply)
60print("Addr Balance:", addr_balance)
すべて表示
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既知の問題

ERC-20トークン受信問題

ERC-20トークンを扱えるように設計されていないスマートコントラクトにERC-20トークンが送信されると、送信されたトークンが永久的に失われる可能性があります。 これは、トークンを受け取るコントラクトに送られてきたトークンを認識したり応答する機能がないためです。また、ERC-20標準には、送られてきたトークンを、受け取るコントラクトに通知するメカニズムがありません。 これが問題となる主要な状態は、次になります。

  1. トークン送信メカニズム
  • ERC-20トークンは、transfer関数かtransferFrom関数を使って送信されます。
    • ユーザーがこれらの関数を使ってコントラクトアドレスにトークンを送信すると、受け取るコントラクトがトークンを扱えるように設計されているかにどうかに関わらずトークンが送信されてしまいます。
  1. 通知の欠如
    • トークンを受け取るコントラクトは、トークンが送られてきたことに関して通知やコールバックを受け取りません。
    • 受け取るコントラクトにトークンを扱うメカニズム(例: フォールバック関数またはトークンを受信する専用の関数)が無い場合、トークンは実質的にコントラクトアドレスにスタックされます。
  2. 組み込まれた処理が無い
    • ERC-20標準では、受け取るコントラクが実装する必須関数が含まれていません。そのため、多くのコントラクトでは、送られてくるトークンを適切に扱うことができない状態が生じています。

この問題から、ERC-223などの代替規格が登場しています。

参考文献

その他の代替性トークン

  • ERC-223
  • ERC-777
  • ERC-4626 - トークン化ボールト

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